
歩留まりという言葉を耳にしたことはありますか?“歩留まりが高い”ほど、無駄が少なく効率的な生産が出来ていることを示す指標です。この記事では、歩留まりの基本からその計算方法、さらには効率的な改善策までを詳しく解説します。
2025/05/22 公開
目次
歩留まりとは?その定義と歩留まりが重要な理由
歩留まり(ぶどまり)とは、製造工程において投入された原材料や部品が最終製品としてどれだけ有効に利用されたかを示す指標です。
「どまり」という響きから「止まり」を連想し、悪い事態のことを思うかもしれませんが、その意味は全くことなります。歩留まりとは、投入した原材料や部品の量に対して、実際に得ることができた割合のことを指します。つまり歩留まりは、成功したよい状態のことを意味します。
通常、歩留まりは歩留まり率として数値化され、パーセントで表されます。
投入した100個の部品のうち、80個が良品として出荷できた場合、歩留まり率は80%となります。
実は歩留まりの「歩」は、「自分の取り分」という意味を指し、自分の取り分が留まる(=利益が残っている)、という意味で使われるようになりました。
歩留まりとは不良品ではなく良品のことを指し、歩留まり率(良品ができる割合)の向上は、製品を製造している側に良いことであり会社の利益にもつながります。

【製造業の歩留まり】
製造業における歩留まりの考え方は、原材料をどれだけ効率的に使用できるかに焦点を当てています。例えば、自動車製造では、鉄鋼やプラスチックなどの素材がどれだけ無駄なく部品に加工されるかを測定し、歩留まりを改善することでコスト削減や品質向上を図ります。
【食品業界の歩留まり】
食品業界では、例えば野菜や果物の加工において、皮や芯などの廃棄部分を最小限に抑え、可食部分を最大限に活用することが求められます。これにより、より多くの製品を効率的に生産することが可能となります。
◾️ 歩留まりが重要な理由
歩留まりが重要な理由は、企業の生産効率や収益性に直接影響を与えるためです。歩留まりが高いほど、投入したリソースが無駄なく活用され、コスト削減や製品の品質向上につながります。原材料の無駄を減らすことで、資源の有効活用が可能になり、環境負荷の低減にも寄与します。
品質の高い製品を安定して供給できること(=歩留まり率が高い状態)は、顧客満足度の向上にもつながります。さらに、歩留まりが低い場合、製造工程での不良品やロスが多くなり、結果としてコストが増大します。これを防ぐためには、日々の生産管理において歩留まりの把握と改善が不可欠です。
歩留まりを重視した生産体制の構築は、長期的な視点で見ても非常に重要です。歩留まりの重要性を理解し、改善に取り組むことが、企業の競争力を高める鍵となります。
歩留まりの計算方法と注意点
◆歩留まり率の計算式◆
歩留まり率(%)=(良品数/投入数)×100
※良品数とは:最終的に顧客に提供できる品質基準を満たした製品やサービスの数
※投入数とは:プロセスの最初に投入された原材料や部品の数
歩留まり率は、製造業やサービス業において、プロセスの効率を測るための基本的な指標です。この計算式を用いることで、プロセス全体の効率を客観的に評価することが可能です。
例えば、100個の部品を投入し、最終的に90個の良品が得られた場合、歩留まり率は90%となります。この数値が高いほどプロセスの効率が良いことを示します。歩留まり率を定期的に計算し、改善の余地があるかを検討することが、製造プロセスの最適化につながります。
歩留まり率を正確に把握することで、無駄を削減し、コストを抑えることが可能になります。また、歩留まりが低い場合、原因を特定し改善することで、生産プロセス全体の効率を向上させることができます。したがって、歩留まりの定義を理解することは、効率的な生産管理の第一歩となります。
◾️ 計算時に気を付けるポイント
まず、投入数と良品数を間違えないことが前提ですが、計算に使用するデータの期間を明確にしておくことも必要です。短期間のデータは、偶発的な要因による変動が大きいため、長期間のデータを用いることでより正確な評価が可能です。
さらに、歩留まり率だけでなく、歩留まりの変化要因を分析することも重要です。
例えば、材料の品質や機械の状態、作業員のスキルレベルなどが歩留まりに影響を与える可能性があります。
歩留まりを改善するための効率的な方法
歩留まりを効率的に改善するための具体的な方法を紹介し、実際の現場で役立つ知識を提供します。
◾️ 改善策1:機械のメンテナンス
機械のメンテナンスは、歩留まりを改善するための基本的かつ重要なステップです。定期的な点検や部品の交換を行うことで、機械の故障を未然に防ぎ、生産ラインの安定稼働を確保します。機械が正常に動作しないと、製品の不良が増え、歩留まりが低下する原因となります。
定期的なオイル交換や摩耗部品の交換のメンテナンスは、機械のパフォーマンスを維持し、長期間にわたって安定した生産を実現するために無くてはならない業務です。 また、スマートファクトリーやIoT化が進んだ工場では、最新の技術を取り入れたセンサーを用いることで、異常を早期に検知し、迅速な対応を可能にしているところもあります。 日々の機械のメンテナンスは歩留まり率向上のために重要です。
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◾️ 改善策2:作業プロセスの見直し
作業プロセスの見直しは、歩留まり改善において見過ごせない要素です。
生産工程を詳細に分析し、無駄な作業や非効率な動きを特定することで、プロセスを最適化できます。作業時間の短縮やミスの削減は歩留まりの向上に寄与します。
作業プロセスの見直しの具体的な取り組みには、「作業手順の標準化」や、「従業員への教育の徹底」があります。そうすることで、品質を一定に保つことが出来ます。また、「作業環境の改善」や「ツールの適切な導入・配置」も作業効率を高めに重要な取り組みです。
これらの取り組みは、歩留まりの向上だけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながります。
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◾️ 業種別のアプローチ方法
歩留まり改善のアプローチは、業種によって異なります。製造業では、機械のメンテナンスや製造プロセスの見直しが重要です。例えば、半導体製造業では、クリーンルームの管理や設備の精密な調整が歩留まり向上の鍵となります。一方、食品業界では、原材料の管理や品質検査の厳格化が求められます。
業種ごとの特性を理解し、それに応じた改善策を講じることが、歩留まり向上の成功につながるのです。
歩留まり改善の実践事例
ここでは、実際の生産現場での効率向上の取り組み例をご紹介します。効率向上の取り組みがどのように歩留まりの改善に寄与するかを解説します。
◾️ TPS(トヨタ生産方式)と歩留まり
TPS(トヨタ生産方式)は、トヨタ自動車が開発した生産管理の手法で、無駄を排除し効率を最大化することを目的としています。この方式は「ジャストインタイム」と「自働化(じどうか)」を二本柱としており、必要なものを必要な時に必要な量だけ生産することを重視します。これにより、在庫の削減や不良品の発生を抑え、結果として歩留まりの向上につながります。
◾️ カイゼン手法の効果的な活用
カイゼンとは、継続的な改善を意味し、現場での小さな工夫を積み重ねていく手法です。この手法は、特に製造業において歩留まりの改善に大きな効果を発揮します。
カイゼンの基本は、現状のプロセスを見直し、無駄を削減し、効率を向上させることです。これにより、コスト削減や品質向上が実現し、歩留まりの改善につながります。
効果的なカイゼンを行うためには、現場の従業員の協力が不可欠です。まずは、従業員が自ら問題を見つけ、改善策を提案しやすい環境を整えましょう。また、PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を活用し、改善策を実施しその結果を評価することで、さらなる改善の機会を見出すことができます。これにより、持続的な歩留まりの向上が期待できます。
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この記事の要点と今後のステップ
この記事では、歩留まりの基本的な概念から、その計算方法、そして改善策までを解説しました。
歩留まりとは、製造プロセスにおける効率性を示す指標であり、製品の品質向上やコスト削減に直結します。
歩留まり率を向上させることが、生産の効率改善につながります。
まずは自社の歩留まり状況を正確に把握し、改善の余地がある箇所を特定しましょう。
歩留まり率向上のためには、機械のメンテナンスや作業プロセスの見直しを実践することが重要です。
◾️ 設備点検のデジタル化が歩留まり率向上に貢献します!
弊社では、製造業においてスマートフォンで設備点検ができる業務効率化のサービス『WIZIoT(ウィジオ)』を提供しております。
近年、人手不足が喫緊の課題である製造業において、スマートフォンを活用した設備点検サービスの導入が進んでいます。
従来の紙や手作業に依存した点検プロセスでは、点検記録の転記ミス(ヒューマンエラー)や情報共有の遅れが生じることがありました。

スマートフォンでメーター点検・設備点検が完結できる『WIZIoT(ウィジオ)』を導入することで、リアルタイムでの記録入力やデータの一元管理が可能になり、目視点検よりも作業時間を約80%短縮することが出来るのです!
※複数(10個)のメーター点検において、目視でメーター値を読み取り、紙の点検票に点検結果を手書きで記載する場合に対して、スマホアプリの連続自動撮影機能によって点検を行った場合を比較した点検時間の削減率(当社調べ)
設備点検の効率化は、製造工程の安定化にも直結します。
設備の異常を早期に発見し、適切なメンテナンスを施すことで、突発的な故障やライン停止を防ぐことができます。その結果、不良品の発生を抑制し、歩留まり率の向上につながるのです。
さらに、蓄積された点検データを分析することで、設備の劣化傾向を予測し、計画的な保守活動を行うことが可能になります。
◾️ 点検業務の標準化で作業の属人化を防ぐ!
加えて、スマートフォンを活用した点検では、点検担当者の経験や知識に依存しない標準化された点検が実施できるため、ヒューマンエラーのリスク低減にも寄与します。作業の属人化を防ぐだけではなく、品質管理の精度を向上させることもできます。
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